← 学習トップに戻る

建設仮勘定 (WIP) の実務

完成・引渡前の原価累計が積み上がる「建設仮勘定」。ここをコントロールできないと、帳簿上の利益は出ているのに資金が枯渇する典型パターンに陥ります。

建設仮勘定 = 未完成工事の原価預け先

完成基準で収益を計上する会社では、工事の 実行原価が完成前に発生するたび、建設仮勘定(B/S 資産の部) に積み上がります。 完成引渡時にこれを売上原価に振り替えて、対応する売上と対応させます。

貸借対照表での位置

資産の部

  • 流動資産: 現預金・受取手形・未収入金
  • └ 完成工事未収入金
  • 未成工事支出金(建設仮勘定)
  • 固定資産

負債の部

  • 流動負債: 支払手形・未払金
  • └ 工事未払金
  • └ 未成工事受入金(前受金)
  • 固定負債

計上 → 振替のフロー

  1. 工事発生時: 材料費・労務費・外注費・経費が発生 → すべて未成工事支出金に集計
  2. 月次棚卸: 月末時点の工事別残高を把握(ダッシュボードでの「実行原価(建仮)」)
  3. 完成引渡時: 当該案件の未成工事支出金全額を完成工事原価に振替
  4. 対応計上: 同時に請負金額を完成工事高(売上)として計上
  5. 差額 = 工事粗利: これが損益計算書上の利益となる

よくある管理ミス

案件別の紐づけが曖昧

リスク

複数現場の外注費を「まとめ発注」すると、どの案件の原価か追えなくなる。結果、完成時に振替額がズレる

対処: 発注段階で必ず「案件ID + 費目」を紐づける運用ルール。ダッシュボードの案件コードに厳密に合わせる

期末の見越し計上漏れ

リスク

月末までに請求書が届かない外注費を計上し忘れる → 建仮残高が過小

対処: 月末5営業日で発注残高を確認、未請求でも発注書ベースで見越し計上

完成済案件の振替遅延

リスク

引渡完了しているのに振替を忘れる → 建仮に残り続ける

対処: 月次の「完成案件チェック」を定例化、ダッシュボードの status=completed と突合

原価の二重計上

リスク

同じ外注費を案件 A と案件 B の両方に計上してしまう

対処: 発注番号と支払明細の 1対1 を徹底、取込時にバリデーション

資金繰りへの影響

建設仮勘定は実際に現金を支払った原価の累計です。引渡まで売上計上されない = 入金が発生しないため、 建仮残高の大きさはそのまま資金繰りプレッシャーになります。

⚠️ "黒字倒産" の典型パターン

  1. 受注が集中、建仮残高が急増
  2. 材料費・外注費の支払いサイトは 60〜90日で近い
  3. 完成引渡まで売上計上されず、入金も 120日後
  4. 現金不足 → 運転資金借入の余力もない
  5. 黒字(帳簿利益は出ている)なのに支払いが回らず倒産

本ダッシュボードの「資金繰り」ページで月末残高を常時モニタ、建仮残高と照らし合わせて余裕資金を確認してください。

早期検知の指標

指標警戒水準見るべき示唆
建仮 / 総資産30% 超資金固定化。借入余力の検討を
建仮 / 年間完成工事高30% 超完成までの期間に現金が寝ている
消化率(実行原価 / 予算原価)進捗率 + 5% 超予算超過の兆候。完成時予想を即更新
案件別 建仮残高月次で増加傾向単一案件の過大支出 or 振替漏れ